コロンボ警部はほうれん草がお好き?!

髙橋です。

今回はコロンボ警部とほうれん草のお話です。

コロンボ警部といえば『刑事コロンボ』

というドラマの主人公です。
犯行シーンから始まり、それを『コロンボ警部』が犯人の計画的犯行のほんの僅かな綻びから徐々に追い詰めていく一話完結型の刑事ドラマです。
このコロンボ警部、いけてない風貌なのにすごい人なんです。
おでこのあたりに手をあてて
「うちのかみさんがね」
という呑気な語り出しで、徐々に犯人を追い詰めていくコロンボ警部。
よくある刑事ドラマだとみている自分が刑事になって犯人を推理するのが面白いところですが、このドラマの場合は、犯人=結論が最初に出てきます。
そのため、ドラマの楽しみ方が違います。
コロンボ警部の相棒になってテレビに向かってアドバイス(もちろん無駄ですよ)したり、犯罪を犯した身勝手な人間に対する怒りをテレビに向かってぶつけてみる、なんていう楽しみ方ができるドラマです。

ほうれん草といえば『ポパイ』

というアニメの主人公『ポパイ』のキーアイテムです。
ポパイの恋人”オリーブ”にちょっかいを出してくる”ブルート”との喧嘩に負けそうになると、
"ほうれん草"の入った缶詰を握りつぶし開けて食べます。
するととたんに超パワーアップして逆転勝ちする、というのがお決まりのパターンです。
"ほうれん草"が嫌いな子供に"ほうれん草"を食べさせるキッカケとして
ポパイの話を持ち出すのも、これまたよくある家族の食卓の風景でした。

20世紀最後の年

ネットワーク機器の組込みソフトウェア開発プロジェクトの開発リーダーとして、ベンダー様の工場に常駐していたときのこと。
あるとき、わたしたちが開発したソフトウェアの不具合が原因で、お客様(ユーザー企業様)先にご迷惑をおかけする事態となりました。
このような場合、単に不具合を改修するだけでは事態を収拾することができません。

ひとたび不具合が発生すると、その改修には次のような対応が必要です。
  • 不具合の直接的な原因の特定と対処
  • 不具合が混入した工程の特定と対処
  • 不具合の間接的な原因の特定と対処
  • 不具合が検出されるべき工程の特定と対処
  • 不具合の原因に類似する処理をしている箇所の特定、類似処理に対する対処要否判定、対処
  • ソースコード修正に伴う影響範囲=再試験範囲の特定・根拠、再試験項目の抽出、再試験
  • 不具合の発生要因を分析し、実行可能な再発防止策の確立
上記対応に加え、次のような内容を報告書にまとめる必要があります。
  • 不具合の原因・対処(上記の対応)の報告
  • 不具合の発生・収束日時、発生時間、それにより発現した現象の報告
  • 不具合発生から収束までの行動を時系列に報告
  • 不具合発生中の影響範囲の報告
更に、報告書を元に報告を行う必要もあります。
  • ベンダー様社内の関係部門(営業担当部門や品質管理部門など)への報告
  • お客様(ユーザー企業様)へのご報告

話を元に戻して

不具合を出したプログラムの担当者が報告書を作成することになるので、当然、わたしが「お客様への報告書」を作成することになりました。

作成した報告書を持って、製品開発責任者にレビューをお願いしたのですが…

     私「N山さん、報告書作成しました。見てください!」
   心の声「経緯から再発防止策まで漏れなく簡潔(A4用紙3枚)にまとめたから、一発オッケーですよね?」
N山主任技師「(サラッと目を通しただけで)うーん、これだとよくわからないな。お客様に伝わらないと思うよ。」
   心の声「えー!なんで?全部ちゃんと書いてあるじゃんね。わからない、という意味がわからない!」
     私「え?どこがですか?必要な要素は全部書いたつもりなんですが?」
N山主任技師「こういう場合、1枚目に『結論』を書かないと、お客様に正しく伝わらないことが多いんだよ。
       ところで、お客様が一番知りたいこと、つまり一番先に伝えるべきことは何かな?」
   心の声「えー?お客様が一番知りたいこと?なんだろう?そんな風に考えたことなかったなぁ。。。」
     私「不具合の発生原因とか今後の再発防止策ではないですか?」
N山主任技師「もちろんそれも伝えるべきなんだけど、まずは、すべて解決した報告なのか、またはまだすべて解決には至っていない中間報告なのかどうかが知りたい。
       これは報告書のタイトルで表現するといい。今回の場合、我々としてはすべて解決したことをご報告したいから『○○に関するご報告』とすればいい。
       つぎに、現在の状態を知りたい。お客様自身もその先にいる人たちに報告をする必要があるので、その人たちに向かってどう報告すればよいのかを知りたい。
       これを報告書の最初に明記すること。
       今回の場合、おとといの12時に不具合が発生して、13時の時点で装置をリブートすることで不具合状況は回避できたので、影響があったのはその間、1時間であったこと。
       その後、本日の深夜1時に機器を対策版のソフトウェアに書き換え再起動した5分間が影響ありだが、その後、現象発生要因となるパケットを処理し正常に動作していることをログで確認していることを伝えればいい。」

『コロンボ警部はほうれん草がお好き?!』

の『ほうれん草』を『報連相』に置き換えると

『コロンボ警部は報連相がお好き?!』

になりますが、本当のブログのタイトルにふさわしいのは

『報連相』はドラマ『刑事コロンボ』の様に『結論を最初に伝える』こと

といったところでしょうか。

わたしが作成した報告書は

「このような不具合が発生しました。原因はこれこれであることが判明したので、このような対処をして、現在はこうなっています。今後はこうします。」

というものでしたが、
N山主任技師が求める報告書は

「現在はこうなっていますので『安心してください』。その根拠は、不具合の原因がこれこれだったので、このように対処をしたからです。今後はこうします。」

というものでした。

誰かに何かを『伝える』ために大切なことは

自分が伝えたいことを伝える

のではなく

相手が知りたいことを伝える

ということを教えて頂いた出来事でした。

N山主任技師には本当に感謝しています。

※報連相は報告、連絡、相談のことです。
※常駐先。私たちの仕事は、割とお客様先に常駐して仕事をすることがよくあります。特にハードウェアを制御するソフトウェアの開発などは、その開発拠点に常駐して仕事をします。
※刑事コロンボはテレビドラマシリーズの番組名です。
※ポパイはテレビアニメの番組名および主人公の名前です